ドイツ自動車メーカーテスラから遅れ&米国充電ネットワーク構築 &米半導体産業、2030年までに6万7,000人の労働者不足

ここでは、世界中の自動車およびモビリティ市場におけるトレンドのニューストピックを紹介します。

自動車業界の興味深いニュースを3つ厳選し、この分野の最新動向をスピーディーに理解していただくために、情報を簡潔で分かりやすい形式で紹介していきます。海外メディア等からのニュースも取り上げて参ります。

― 今週の3選  ―

July 25, 2023

1.テスラ、世界のEVレースでドイツの自動車メーカーに差をつける

ドイツの自動車メーカーはここ数年、EVにシフトし、米テスラの覇権に対抗する姿勢を見せてきたが、実際はその狙いとは裏腹に、さらにテスラから遅れをとっている。テスラが今年上半期に販売したEV台数はは89万台近くに達し、フォルクスワーゲン(VW)、BMW、メルセデス・ベンツ・グループ、ポルシェの合計EV納車台数を上回った。 ドイツ勢は、ソフトウエアの問題で主要モデルの発売が遅れ、最大の市場である中国での販売台数が減少している。 ドイツ勢が内燃機関時代の生産拠点の再編について労働組合との難しい協議に陥っている一方で、テスラはドイツ工場の拡張を計画しており、メキシコに新工場を建設する準備を進めている。

ハンブルク近郊を拠点とする自動車アナリストのマティアス・シュミットは、「テスラは、すべての主要市場において、ドイツの自動車メーカーをはるかに上回っている。」と指摘する。さらに、「ドイツ勢は、EVの収益性を確保するために必要なスケールを達成するために、販売台数を増やす必要に迫られている。」という。欧州最大の経済大国であるドイツでは、インフレ圧力、労働者の不足、エネルギー価格の高騰が、EVシフトがもたらす構造的課題に拍車をかけている。ミュンヘンに本拠を置くIfo Instituteが今月発表した調査によると、ドイツの自動車メーカーへの期待値は2008年の金融危機以来最悪だという。

ドイツ勢にとって最大の脅威は、中国での存在感が弱くなっていることだ。VW、BMW、メルセデスは数十年にわたり、世界最大の自動車市場中国でガソリン車の販売を独占してきたが、最近では、現地の消費者に合わせた技術やソフトウェアを備えた手頃な価格のEVを製造する中国勢のEVに後れをとっている。 ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、マイケル・ディーンは、「ドイツ勢の次世代EVプラットフォームは、状況を一変させる可能性がある。そのときこそ、中国でもドイツ勢の大きな躍進が見られるだろう」と述べた。

July 26, 2023

2.GM、ステランティス、ホンダなど大手自動車メーカー7社が米国充電ネットワーク構築に参加

大手自動車メーカー7社が、北米で大規模なEV急速充電ネットワークを構築するための合弁会社を設立すると発表した。参加する7社は、ゼネラルモーターズ(GM)、BMWグループ、ホンダ、現代自動車(ヒョンデ)、起亜自動車(キア)、メルセデス・ベンツ、ステランティス。2023年中ごろ設立予定の合弁会社は、米国とカナダに少なくとも3万基のEV用高速充電器を設置する計画。新しい充電ステーションの第一号は来年の夏にオープンする予定であると発表した。

「オール・エレクトリックの未来に対するGMのコミットメントは、顧客が好むEVを提供するだけでなく、充電に投資し、よりアクセスしやすくするために業界全体で取り組むことに重点を置いている」と、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は声明で述べた。

最近のコックス・オートモーティブの調査では、約3分の1の人がEVを購入しない理由のトップに充電設備がないことを挙げているが、その割合は2021年の40%から低下している。同時に、EVを検討している人の割合は、2年前の38%から50%以上に上昇した。

新しい充電ステーションは、主要都市の周辺や人気の高い移動ルート沿いに建設される予定だと両社は述べた。各充電ステーションには、EVのバッテリーを30分ほどで約80%まで満たすことができる高出力の急速充電器が複数設置される。可能な限り頭上には日差しや雨を遮る天蓋が設置され、レストランやバーなどの近くにも設置される予定だ。

対応する充電方式は、テスラが「Tesla Supercharger」で採用しているNorth American Charging Standard (NACS)ケーブルと、より広く使われているCombined Charging System (CCS)ケーブルの両方が搭載されることになる。

米国エネルギー省のデータによると、この新しい合弁事業は、それだけで現在米国にある急速充電器の数を大幅に増やすことになる。現在、米国には約3万5千基のNACSおよびCCS充電器があるが、EV自動車の増加に伴い、今後さらに多くの充電器が必要になる。オートトレーダーのエグゼクティブ・エディターであるブライアン・ムーディー氏は、「今年は米国で100万台以上のEVが販売される最初の年になるだろう」と述べた。昨年バイデン政権が発表した排ガス規制計画では、2030年までに米国で販売される新車の半分をEV自動車にすることが実質的に義務づけられる。 米エネルギー省傘下の国立再生可能エネルギー研究所は、その時までに18万2000基の急速充電器が必要になると見積もっている。

画像©:Jae C. Hong/AP

July 25, 2023

3. 米半導体産業、2030年までに6万7,000人の労働者不足と業界団体が発表

米国半導体工業会(SIA)は、米国半導体産業は2030年までにおよそ67,000人の労働力不足に直面するとの見解を示した。

米半導体産業の労働人口は、今年の約34万5000人から10年後には46万人に増加すると予測されている。しかし、SIAとオックスフォード・エコノミクスが実施した調査によると、学校卒業率が現在のペースで推移した場合、半導体産業の労働人口増加に比例して必要な資格のある労働者を十分に得られない見込みという。

米国では、国内の半導体製造強化に向けて、新たな製造拠点や研究開発への資金を確保するCHIPS法が、昨年8月に成立した。

商務省は、この法律に基づいて規定された390億ドルの製造補助金を監督しており、インテル、台湾セミコンダクタ・マニュファクチャリング、サムスン電子などの企業が申請すると発表している。同法はまた、新しい半導体工場の建設に対する25%の投資税額控除も創設しており、これは240億ドルに相当する。

これらの工場新設等により、雇用が創出されるとSIAは指摘。それに伴い、コンピューター科学者、エンジニア、技術者などの労働者が不足すると予想している。