2024年12月23日 EVバッテリーの現状とこれから|バッテリーコスト、査定基準、再利用から次世代の可能性まで
EV普及の促進、或いは停滞には様々な要因がありますが、この項目ではEVバッテリーを取り巻く社会的要因について見ていきます。
バッテリーコスト
EVバッテリーの製造にはレアメタル(リチウム・コバルト・マンガン)を使用しています。
そもそもの採掘量が限られていること、加えてバッテリーの再利用が進まないことが影響し、原料の争奪戦、ひいてはバッテリー価格の高騰は避けられないものとなっております。
このような課題を改善すべく、メーカーは様々な試みを行っております。リチウムイオンバッテリーに比べてレアメタルの使用割合が少ないLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーや、BYDが開発した「ブレードバッテリー」などがバッテリーの生産コストを下げました。そのような傾向を受けつつも、従来のバッテリー原料として重宝されてきたレアメタルの利用・再利用法は今一度見直しが必要とされています。
【トレンド】EV価格低下のワケ|BYD・日産はいくら?補助金制度もまとめて市場動向を探る
こちらの記事では、EV(電気自動車)市場を「車両価格」をテーマに掘り下げていきます。バッテリー技術の進歩という観点から、EV車両価格の傾向について探ります。
曖昧なバッテリー査定基準
現在の技術でEVバッテリーの劣化の度合いを正確に評価するには、車両から電池を摘出し、部品の劣化具合を直接確認するという、非常に大がかり且つ実現不可能なやり方しかありません。そのため、走行距離や使用年数を基に憶測するという、非常に大まかな基準で中古バッテリーの査定が行われています。
正確なEV電池の評価ができないということは中古車EVの価格崩落に繋がり、EV普及の更なる歯止めとなってしまいます。
EVを製造する際にかかるコストの約20~30%ほどをバッテリー価格が占めており、車両価格を定める大きな要素となっております。
そのため、中古バッテリーの価格が必要以上に低価格に設定されてしまうと、それに伴い中古車両の価格が下落してしまいます。
EVのバッテリーは大抵、使用8年または走行距離が16万kmが経過した時点で、新品時の満充電容量は70%程度となるとされておりますが、あくまでも目安です。場合によっては想定よりも早く劣化が進んでしまい、高額なバッテリー交換費用が掛かってしまうかもしれないという懸念から、中古車EVの需要は低下し、価格が更に本来のバリューよりも低価格で設定されているという問題もあります。
バッテリーの再利用
リチウムイオン電池の原材料であるレアメタルは、採掘と廃棄段階で環境に悪影響を及ぼすこと、そして需要が将来的に拡大することが見込まれるため、レアメタルの再利用は緊急を要する課題となっております。レアメタルはスマートフォンやパソコンのバッテリーに使用されており、需要は今後更に伸び続けると考えられ、「2040年までに4倍に拡大する」と言われることもあります。
しかしながら、再利用はあまり進んでおらず、新車に併せて新しい材料で作られることが多いようです。
現在、使用済みバッテリーの処理方法には、リサイクルとリユースの2つのアプローチが存在しています。
リサイクルでは、バッテリーからリチウムやコバルトなどの貴重な材料を回収しますが、現時点では中古バッテリーの運搬コストや、前処理にかかる手間によってコストが高くつくため、新価格がより抑えられる新品製造が選ばれてしまうという事情があります。
転職をご検討の方はこちら
転職支援サービスに登録企業の方はこちら
採用支援について知るバッテリー再利用事業
この状況を改善するため、自動車メーカーを中心に、トレーサビリティシステムの構築や検査体制の強化が進められています。
トレーサビリティとは、バッテリーの製造段階から、組立、販売、使用、そして最終的な廃棄・リサイクルに至るまでの全過程を追跡・管理する仕組みを指します。生産から廃棄までの一貫した管理体制の確立することで、EVバッテリーへの再利用が促進されるのみならず、クリーンエネルギーを用いる他産業への転用が可能になることがメリットとして挙げられます。バッテリーの品質管理や効率的なリサイクル処理は、自動車産業の発展を支える手段として、今後更に期待されます。
エネルギー産業への二次利用
中古バッテリーの二次利用の手段として、自動車としての利用の他に、定置型蓄電池へのリユースが挙げられます。太陽光発電用バッテリーや、停電時用蓄電池、バックアップとしての蓄電池への転用が可能で、再生可能エネルギーや、自然エネルギーの蓄電を通じて、クリーンエネルギーを促進するトリガーへと展開することができます。
V2H技術による非常用電源活用
V2Hとは、”Vehicle to Home“の頭文字を取ったもので、EVで充電した電力を、家庭用に使えるよう還元する機器のことを指します。従来は家庭で発電した電力をEV充電に利用する、一方通行の電力供給のみでしたが、この技術を用いることでEV-家庭用蓄電池の双方の電力のやり取りが可能になります。
自動車を移動型蓄電池として活用できるようになるということは、V2HによってEVが災害時の臨時の電力源として活躍できるということです。且つ、定置型の家庭用蓄電池と比較して移動して電力を供給することができる、言わば「移動型の蓄電池」となるため、災害の多い日本ではニーズの高い技術と言えるでしょう。
転職をご検討の方はこちら
転職支援サービスに登録企業の方はこちら
採用支援について知るまとめ
EVの今後は、それを取り巻く社会課題と密接に関わっています。本記事を通じて、EVバッテリーを切り口とした、EVのさらなる普及に向けたアプローチ方法を探ってまいりました。
自動車業界におけるトレンドの理解は、転職を考える際、特に企業リサーチや面接対策において、非常に役立ちます。Turnpoint Consultingは自動車業界特化のエージェントとして、転職を考えている方には自動車・モビリティ業界の転職市場や選考での対策について、また、企業の採用担当者の方にはこの業界の人材の流れについて、最新かつ信頼性の高い情報をお届けします。