2024年9月30日 【最新データで探る】バイク業界の今|電動化から中古車まで最新トレンドを解説
2. 最新の二輪車市場トレンド
●電動バイクの市場状況
電動バイクの市場は、近年大きな変動を経験しています。世界的*に見ると、販売台数は2021年に892万台とピークを迎えた後、2022年と2023年に連続して減少しました。この減少傾向の主な要因は、世界最大の電動二輪車市場である中国での需要低下にあります。
市場の動向は地域によって大きく異なります。インドでは、政府の電動車普及政策やガソリン価格の高騰、新製品の投入などが追い風となり、2023年の販売台数が前年比23万台増の86万台に達しました。タイやインドネシアなど、他のアジア諸国でも、規模は小さいものの、電動二輪車の需要が着実に伸びています。
欧州市場では、環境政策の一環として電動二輪車の普及を促進する様々な施策が導入されています。購入補助金制度や税制優遇措置などがその例です。フランス、ドイツ、スペインなどでは電動車の比率が上昇傾向にありましたが、2023年には一時的に低下しました。しかし、今後は排ガス規制の強化や都市部での内燃機関車の走行規制強化により、電動二輪車の需要が伸びるかもしれません。
*世界29ヵ国のデータに基づく。
●電動バイクのメリットと現状課題
電動バイクは環境に優しい交通手段でありながら、その技術はまだ発展途上であり、メリットとデメリットがあります。以下で、電動バイクの主な特徴を詳しく見ていきましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
1. 環境への配慮 電動バイクは走行時に二酸化炭素を排出しないため、環境負荷が低く抑えられます。 |
1. 短い航続距離 バッテリー容量の制限により、1回の充電で走行できる距離が短くなります。 |
2. 静音性 振動や騒音がほとんどないため、早朝や夜間、住宅街でも快適に走行できます。 |
2. 長い充電時間 ガソリン給油に比べ、充電には時間がかかります。 |
3. 充電の利便性 着脱式バッテリーを採用しているモデルが多く、家庭用コンセントで簡単に充電できます。 |
3. 高い車両価格 高性能バッテリーの搭載により、同クラスのガソリンバイクより価格が高くなります。 |
4. 低ランニングコスト 燃料費が安く、シンプルな構造のため故障も少なく、維持費が抑えられます。 |
4. 限られた車種選択 現時点では、選べる車種が少ないのが現状です。 |
5. 補助金の活用 国や自治体による購入補助金制度を利用できる場合があります。 |
3. 日本の二輪車市場分析
2023年における二輪車販売台数は40万5千台となり、去年とほぼ変化はありませんでした。前年より約3%の落ち込みを見せた2022年と比べると売り上げが比較的安定していたと言えるでしょう。
その中でも原付(50cc以下の車両)の販売数低下が目立ちますが、これは日本の二輪車市場の変化を如実に表しています。かつては生活に欠かせない乗り物として人気が高く、1980年代に出荷台数ピークを迎えましたが、景気低迷や若者のバイク離れ、電動アシスト自転車の台頭により、低下の一途を辿りました。2023年の出荷台数は約9万台と、ピーク時の実に3%程度となっております。
このような需要低下の流れの中で、2025年11月以降の排ガス規制強化の影響もあり、ホンダとスズキの2社は原付の国内生産終了を検討中です。右肩下がりのトレンドの中で規制に適合するような技術開発を行うことも難しく、やむを得ない流れと言えるでしょう。
今後の原付への需要は電動バイクが担えるよう、各メーカーでは商品開発が進みます。
2023年度(2023年4月~2024年3月)における日本国内の輸入小型二輪車市場は、前年に比べて2.2%増加の26,887台の新規登録がありました。
ハーレーダビッドソンは、日本市場において輸入小型二輪車のシェアで圧倒的な存在感を示しています。2023年度において新規登録台数は9,979台と、前年の9,749台から微増し、引き続き市場のリーダーの地位を維持しています。続くBMWの新規登録台数は5,742台と、前年の5,510台から成長を見せ、ハーレーダビッドソンに次ぐ市場シェアを誇ります。市場シェア3位のトライアンフの新規登録台数は4,161台と前年の3,454台から大幅に増加し、120.5%の成長率を達成しました。
●新規登録台数メーカーシェア(2023年度)
参照:JAIAのデータをもとに作成
●輸入二輪車メーカーの市場シェア推移(2011~22年)
2023年の軽二輪中古車販売台数は12万1026台で前年比3.2%減少し、ほぼ変動の無かった新車市場とは異なり、市場の縮小が見て取れる結果となりました。小型二輪の中古車販売台数も7万8777台で前年比5.6%減少しています。
コロナ禍の最中、半導体の入手困難や物流の乱れにより、新車バイクの生産・配送に遅延が生じた影響を受け、中古二輪車の価格は一時期大幅に高騰しました。最近になって価格は徐々に落ち着きを見せていますが、ユーザーの「中古車は高い」という印象を払拭する必要があるようです。
バイク文化が新たな転換期を迎えています。2020年以降のコロナ禍で「おうち時間」が注目される中、2021年には「ソーシャルディスタンスを保てる移動手段」としてバイクの人気が急上昇しました。特に中古バイク市場では、新車供給不足も相まって価格が高騰。この傾向は2023年まで続き、2001年以来の上昇トレンドを形成しています。
注目すべきは「バイ活」と呼ばれる新しいライフスタイルの登場で、少人数でのツーリングや写真共有を楽しむ女性や若者のライダーが増加。さらに、円安の影響で海外バイヤーからの需要も高まっており、バイク市場は多様化と活性化の時代を迎えています。
4. 今後の展望
1.電動化の促進
世界的なトレンドとして、カーボンニュートラル(CN:Carbon Neutrality)の目標達成に向け、二輪車業界でも電動化が急速に進行しています。矢野経済の調査によれば、2030年までに、電動二輪車の普及率は最大27%にまで上昇すると予測されています。
電動二輪車は、騒音を抑え、ランニングコストが低く、四輪車と比較してバッテリー交換が効率的に行えるなど多くの利点を備えています。ただし、航続距離や車両価格などの課題も依然として存在し、これらの課題に対処することが求められています。特に、日本において電動二輪車の普及にはインフラの整備が不可欠です。日本でのインフラ構築においては、エネルギー会社と国内二輪メーカーの合意により『Gachaco』が設立され、充電ステーションの拡大が進められています。この動きは、環境への負荷を低減するための重要な一歩となっています。
輸入二輪車メーカーの電動化戦略においては、以下の通りです。
- Harley Davidson
2021年に独自の電動ブランドLiveWire を導入し、世界で最も魅力的な電動バイク ブランドになることを目標に、2022年にはAEA-Bridges Impact Corpとの経営統合を完了、新しくLiveWire Group, Inc.を設立しました。
参考:『Harley-Davidson – Our Strategy』
- BMW Motorrad
2030年までに車両1台当たりのCO2排出量を2019年比で平均20%削減し、10万台の電動二輪車を販売することを目標にしています。2014年にC evolution を導入して以来電動二輪車の開発が進んでいます。
参考:『BMW Motorrad sustainability strategy | BMW Motorrad』
- Triumph Motorcycles
Triumph Motorcycles、Williams Advanced Engineering、Integral Powertrain の e-Drive 部門、およびウォリック大学の WMG の4社の専門知識を組み合わせて、技術革新と高度な電動バイクを開発する『プロジェクトトライアンフTE-1』と呼ばれる2年計画に取り組みフェーズ4を完了しています。
参考:『Project-triumph-te-1』
2.二輪車産業政策 ロードマップ2030
経済産業省は、二輪車産業の成長を促進するために「二輪車産業政策 ロードマップ2030」を発表しています。2014年に設定されたロードマップ2020の目標である国内販売100万台には達成できませんでしたが、世界市場でのシェアは50%以上に伸長しました。2020年に入り、カーボンニュートラルへの対応や、新たなモビリティの形成を目指す課題に取り組む新たな目標が設定されました。ロードマップ2030の具体的な目標には、2050年までに事故死者数をゼロにするために二輪事故死者数を半減させること、新たなモビリティの出現に伴い、二輪車の有用性認知度を35%まで向上させること、レンタルシェアの成長を促進し、認知度を70%向上させることが含まれています。このロードマップは、日本の二輪車業界が成長し続け、新たな課題に取り組むための指針となるでしょう。
リンク:『二輪車産業政策 ロードマップ2030』
4. 最後に
二輪車市場の近況を、数字を基に見て参りました。販売台数における大幅な変動こそ無いものの、業界全体が変化の波の中にいることが見てとれました。自動車業界全体のトレンドから法改正、消費者のライフスタイルの変化まで、様々な要因が二輪車市場にダイナミックな影響を与えています。
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参考記事(外部リンク)
・電動バイクとは?特徴・種類・メリット・デメリットを紹介!|FreeMile
・電動キックボードに関する交通ルールを確認しましょう!|政府広報オンライン
・World Motorcycles Market Reports a Robust +5% Increase In First Half 2024|Motorcycle’s Global Data
・Global Motorcycle Production and Sales: Overview of India, China, and ASEAN|MARKLINES
・Motorcycles – Worldwide|statisita
・二輪車市場規模、シェアおよび業界分析、種類別(スクーター、オートバイ、原付)、エンジン排気量別(125cc未満、126cc~155cc、156cc~200cc、201cc~500cc、500cc以上)、推進力別(ICE)および電気)、および地域予測、2024 ~ 2032 年|フォーチュン ビジネス インサイト
・世界電動二輪車産業の2035年展望|Fourin. inc,
・電動バイク(二輪EV)はどんどん便利になる!今後の注目ポイント|新電元工業株式会社
・原付きバイク 国内で生産終了見通し どうなる生活の足?|NHK|日本放送協会
・日本の自動車工業2024|JAMA – 一般社団法人日本自動車工業会
・2023年度輸入小型二輪車 新規登録台数(速報)|JAIA 日本自動車輸入組合
・中古車販売台数は微減だが、輸入小型二輪販売は5年連続でプラスとなった2023年|BDS Report
・<バイク王調査レポート>【2023年】コロナ禍でなぜ中古バイク価格が高騰?その理由と今後の市場動向に切り込む!③|PR TIMES