2024年 EV市場の展望|HVの方が人気?業界注目の4つのトレンドとは?

近年の電気自動車(EV)市場の伸び幅には目を見張るものがありますが、昨今は状況が変わりつつあるようです。今年は一体どのような成長や変化が見込まれるのでしょうか。本記事では、2024年におけるEV市場拡大に向けて注目するべきトレンドについて解説し、加えてEV市場と併せて注目される最近のハイブリット車(HV)人気の事情、最後に今後の業界状況を左右すると言われる2つの政治イベントについて触れます。

 

はじめに:EVは流行っている?停滞しつつある?

こちらの章ではではNasdaqのレポートを参考に、2024年初頭のEV市場の様子と、今年一年間で見込まれている4つのトレンドについて分析していきます。それでは早速追っていきましょう。

2023年はEVの販売が急増しましたが、最近では一部で販売が減少したとの話を聞くこともあります。ここ数年で急激に普及したEVも、ここに来て頭打ちとなってしまうのでしょうか。

しかし、Nasdaqによると、EVの販売はますます拡大すると見て良いとのことです。様々な見立てが飛び交っていますが、EVの販売自体は着実に伸び続けると考えられます。

2021年第4四半期以来、電池式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド(PHEV)の販売はアメリカ市場において最も速い年間成長率を記録しており、2023年9月にはEVの販売台数が初めて100万台を超えました。しかし、最近になって、一部でEV販売に対するネガティブな憶測が飛び交うようになってきました。例えば、BloombergNEFによると、販売台数予測に下方修正が入ったとのことでした。しかし、その後、予測より20%以上の増加が見込まれることとなったようです。さらに、Cox Automotiveは2024年に全電気自動車が総販売台数の10%以上を占めると予測しています。ハイブリッドを含めると、来年はEVが車両販売の約24%を占める見通しとのことです。※

※Nasdaq参照。なお、データ出典はForecast: 2024と見られる。

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次に、2024年におけるEV市場の更なる拡大に向けて、Nasdaqの指摘する4つのトレンドについて見ていきます。

♦ トレンド1:車両の値下げ

2024年以降の予測されるトレンドとして、まず、車両価格の低下が挙げられます。より多くの人々にとって手ごろなものになるというものがあります。

一般消費者にとって、価格がEVを買わない理由となってしまうことは、充分理解できることではないでしょうか。分かりやすい例で言えば、業界アナリストのJ.D. Power曰く、現在、アメリカでEVを購入するには5~6万ドル(750~900万円)程度の予算が必要で、キアやキャデラックなどが買えてしまう金額だとのことです。※¹促進のために政府が助成金を出している国は非常に多く、購入価格へのアプローチがどれだけ重要なのかが伝わってきます。メーカーもこの努力を怠っておらず、更なるEV普及に向けて、より多くのEVモデルの価格を下げるのではないかと予測されています。

そのためには、低コストでの製造を達成するための技術が欠かせません。フォードとゼネラルモーターズ(GM)はEVの技術コスト低下を狙い、他社との提携を厭わない姿勢を見せています。また、ヨーロッパの大手メーカーであるステランティスやルノーも、より手ごろなEVを生産を模索していようです。※²最も、低価格のEVを打ち出しているBYDを筆頭とした中国メーカーへの対抗という意図もありますが、結果的に、消費者にとって前向きな購買をサポートすることになるのではないでしょうか。

♦ トレンド2:個体EVバッテリー技術の向上

近年、固体EVバッテリー技術が急速に進化し続けていますが、2024年もこのトレンドが続くと見られます。

EVバッテリーの中で注目されている技術のうちの一つが、トヨタが発表した745マイルの航続距離を持つ固体EVバッテリー、加えて2023年10月に結んだ、932マイルの航続距離を持つ固体バッテリーの大量生産契約でしょう。トヨタだけでなく、他のメーカーも固体EVバッテリー技術を加速させることが期待されています。

これらのバッテリーのメリットは、同じスペースにより多くのエネルギーを詰め込むことができ、航続距離を大幅に伸ばせることです。航続距離不安が解消されれば、より購入者にとってEVは魅力的な選択肢となるのではないでしょうか。

♦ トレンド3:テスラのEV充電プラグの業界標準化

テスラの充電プラグがより普及することが考えられます。

2022年11月にテスラが充電技術改善と他社への充電スポット開放を発表し、以降、テスラの充電ステーションが他メーカーの自動車でも利用可能となりました。2023年では、フォード、GM、ホンダ、ステランティスなどの主要メーカーがテスラの充電プラグを採用し、テスラの充電ネットワークの使用が可能となりました。※³

各メーカー専用の充電ボートの拡充を待たずとも、既存のテスラの充電スポットを利用することが出来るようになれば、ユーザーの航続距離に対する不安が減少するでしょう。現在、世界には45,000ほどの充電スポットがありますが、そのうち12,000は北米にあります。※³’北米では、今後全てのメーカーがテスラの充電プラグを採用するのではないかといった予測もされるほどですが、この流れが世界的に広まっていくことが望まれます。

♦ トレンド4:バッテリー交換技術の浸透

EVチャージの方法として、固定バッテリーの他にも、バッテリー交換の可能性も追求され続けています。

例えば、自動車メーカーのStellantisが数分で100%の充電が可能なモジュラーバッテリー交換技術を開発したAmpleと契約したことが報じられています。固定バッテリーに次いでバッテリー交換技術にも着目し続けていきたいところです。

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以上のトレンドをカテゴリー分けすると、

  1. OEMにおけるトレンド(トレンド1
  2. サプライヤーにおけるトレンド(トレンド2
  3. インフラストラクチャー(モビリティサービス)におけるトレンド(トレンド3

といったように理解することができます。

自動車業界・EV市場のトレンドと一言で言っても、何層にも重なる分野が影響し合いつつ、それぞれが「EVの更なる普及」を目指して進展していることがよく分かるのではないでしょうか。業界全体の傾向の中で、ご自身の関わる分野がどのようなトレンドを抱えているのかが分かると、より一層業界全体への理解が深まるかと思います。

ハイブリット車(HV)人気の再燃

ここまで、EV市場の伸びしろについて見ていきました。しかし、最近になって、EVと比べてハイブリッド車(HV)が世界的に再び人気を集め始め、売り上げを伸ばしていると言われています。実際、トヨタを始めとした日系OEMは、他国のメーカーと比べてEVへの着手が遅れていることで知られていましたが、HVが注目され始めた結果、販売台数を伸ばすこととなりました。

バッテリー式電気自動車(BEV)を始めとしたEVへのシフトは、決して批判を浴びている訳ではありませんが、ユーザー側の現在の生活の中に最適な車種か、というと疑問が残ります。具体的には、充電スポットの普及やバッテリー性能の向上が追い付かず、依然として運転中の充電の不安がまだ解消されていないこと、加えて価格が比較的高いことなどが不安材料としてあり、導入に消極的になってしまうケースが多いそうです。それに比べて、燃料にガソリンを使用することができ、購入価格が抑えられ、ガソリン車と比べれば環境に優しい選択肢であるHVは、消費者にとって魅力的に映ることは納得できます。

整理すると、

  • 充電スポットの普及やバッテリー性能の向上が追い付かず、依然として運転中の充電の不安がまだ解消されていない
  • 価格が比較的高い

これらは、前章で述べたEVにまつわるトレンドの裏返しと言えるのではないでしょうか。

むしろ、EVへの関心は高まる中、生活の中に受け入れる体制が充分に整っていない状況で、折衷案としてHVが選ばれている、といったようにも解釈できます。
しばらくはHV人気が続くかもしれませんが、EVへの注目は衰えることは無いでしょう。そして、上記の課題は、解決に向けて企業がEV普及に向けて重点的に取り組んでいるものでもあります。EV市場拡大の鍵となるこれらのトレンドは、今後益々の発展が望まれます。

今後注目するべきイベント

最後に、EV市場の今後を左右すると考えられる、2024年の政治イベントに触れます。

アメリカ大統領選挙

アメリカ大統領選挙が11月5日に行われ、その結果が今年中のEV促進の動きに少なからず影響を与えることが予想されます。

現職のバイデン氏が当選した場合は現状のEV普及政策の続行が考えられますが、共和党候補であるトランプ氏が当選した場合、その政策への遅れが生じるのみならず、環境政策が撤回されることも想定できます。

現在(2024年3月)もバイデン氏とトランプ氏の環境政策に関する考え方には大きな違いがあることは明らかで、お互いがお互いをけん制し合っている状態です。選挙戦略もまた環境政策へ影響を与えているようで、バイデン氏は先日、自身の環境政策への反発を鑑みて、EV比率目標を大幅に修正することを発表しました。※²このように、自動車業界に対してダイレクトな政策の変更が見込まれるため、それぞれの候補者の一挙手一投足に注目する必要があります。

※²=米政権が2032年までのEV比率目標大幅に引き下げ、大統領選が影響か

 

欧州議会選挙

欧州議会とはEU理事会と共に法律を策定する機関で、議員は加盟国内で直接選挙で選ばれます。

6月頭に開催される今回の選挙の注目点としては、昨今、ヨーロッパ各国で勢力を伸ばしている右派政党、極右政党がどれだけの議席を獲得するか、ということです。もし右派勢力が議席を増やした場合、国内産業の保護のため、環境政策に関する意思決定に遅れが生じたり、或いは環境政策による規制を緩和する動きが出てくるかもしれません。

環境政策と強く結びついたEV市場の成長は、その政策の停滞と共に、鈍化、縮小の流れを辿るかもしれません。アメリカの将来を左右する大統領選、EUにとって分岐点ともなり得る欧州議会選、どちらも動向を注意深く見守っていく必要があります。


♦ 最後に


前述のNasdaqの記事の言葉を借りると、2024年のEVトレンドは「もっと」がキーワードです。

もっと多くのモデルが登場し、もっと手ごろな価格で提供され、航続距離が延び、より良い技術が導入され、充電オプションが増えると期待されています。自動車の持つ可能性はますます注目され、加えてCO2削減の必要性がますます明確になっているため、EVのトレンドを理解することは自動車業界の動向を予測する上で非常に重要です。

各国のメーカーも熾烈な競争を繰り広げていますが、今後どのような企業がどのような施策・技術を打ち出していくのか、そして今年開催の二つの選挙が今後EV戦略にどのような影響を与えるのか、まだまだ先は読めません。過去の実績やブランドに囚われずに、これらのトレンドを把握しつつ、動向を注視し続けることが必要です。

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