自動車用電子部品の規格「AEC-Q100」とは

皆さんは「AEC-Q100」という規格を知っていますか。この規格は自動車に搭載される電子部品の規格ですが、自動車の電子化が進むにしたがって、この規格の重要性が増しています。ここでは、「AEC-Q100」の概要、登場の背景、特徴などについてまとめ、最後に規格に準拠することの重要性を解説します。

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1. AEC-Q100とは

AEC-Q100は、自動車用電子部品の信頼性を確保するための品質規格です。この規格は、車載用電子部品の要件を満たすために、電子部品メーカーが対象となります。そして、各種の試験要件や要求基準を規定しています。

具体的には、電子部品メーカーがこの規格にのっとって車載用電子部品を製造します。そして、自動車メーカーがこの電子部品の評価・検収をこの規格にのっとって行います。つまり、自動車用電子部品の製造や使用に関しては、電子部品メーカーと自動車メーカー両方がこの規格を理解している必要があります。別の言い方をすれば「品質」に関する世界共通言語と言えるかもしれません。

2. AEC-Q100の登場の背景

♦ 車載用電子部品の信頼性と高度化

この規格が登場した背景は、自動車産業の急速な発展と共に、車両の電子化が進んでいることが挙げられます。自動車における電子部品は、安全性や信頼性の面で非常に重要です。そして、特に複雑な車載システムが普及するにつれて、それらの要件はますます重要になっています。

一方、従来の自動車の電子部品は、車両内の基本的な機能を制御するのみではありましたが、自動車の内部環境は通常よりもより厳しい環境であり、従来から、車載用電子部品には高い信頼性が求められていました。

しかし、近年ではエンジン管理、エアバッグ、ブレーキ制御、運転支援システムなど、より高度な機能を持つ電子部品が多数採用されるようになりました。つまり、自動車の「電子化」がより一層進んでいます。そのため、これらの部品の信頼性と安全性が自動車産業全体の要件としてより厳しく求められるようになりました。

このような状況の中、AEC-Q100は、自動車産業における安全性と信頼性の向上を目的として、電子部品の品質基準として策定されました。これにより、自動車メーカーや電子部品の製造メーカーは、より高い基準を満たすことが求められ、結果として安全で信頼性の高い自動車の製造が実現されるようになりました。

♦ 発祥の国とISOとの関係

AEC-Q100は、米国自動車エレクトロニクス協会(Society of Automotive Engineers, SAE International)によって策定された規格です。この団体は、米国を拠点とする国際的な自動車技術者の専門団体で、自動車産業における技術の標準化や規格策定に貢献しています。

そして、AEC-Q100は世界中の自動車メーカーやサプライヤーによって広く採用されていて、国際化が進む自動車産業におけるグローバルな品質基準の一部となっています。

また、ISO規格とも関連があります。ISO(International Organization for Standardization)は、国際的な標準化団体であり、世界中のさまざまな産業分野にわたる標準化を推進しています。自動車産業における標準化もその一部であり、ISOは自動車産業に関連するさまざまな規格を策定しています。

例えば、ISO 9000シリーズは品質管理システムに関する国際的な規格で、自動車産業にも適用されます。また、ISO 26262は、自動車産業における機能安全性に関する規格で、自動車の電子・電気システムの安全性を確保するためのプロセスや要件を定義しています。

AEC-Q100は、ISOが策定する自動車産業に関連する標準の一つとして位置付けられているが、直接的にISOの規格としては認定されていない。つまり「ISO〇〇〇〇」という規格は存在しません。ただし、AEC-Q100の基準は国際的な自動車産業に広く採用されており、ISOの標準化活動とも関連しています。ISOが自動車に関する標準化のための規格を策定する際には、このAEC-Q100を参照して策定されることになります。

3. AEC-Q100の特徴

一言でいうと「非常に厳格」です。AEC-Q100は、自動車産業における電子部品の信頼性を確保するために策定された非常に厳格な規格です。自動車産業においては、車両の安全性と信頼性が最優先事項となるため、このような厳格な規格が必要とされています。

AEC-Q100の基準は、温度サイクルテスト、耐湿熱テスト、メカニカルショックテストなど、様々な厳しいテスト要件を含んでいます。そして、AEC-Q100ではこれらの物理的テストでも通常の規格よりも厳しい要求がなされており、これらの要件を満たすためには高い品質基準と信頼性の確保が必要となっているからです。

また、ICの回路設計工程(上流工程)からこの規格にのっとる必要があります。ICの設計段階では、AEC-Q100の要件に合致するように信頼性の高い設計を行う必要があり、製造段階では、適切な製造プロセスと品質管理システムを確立し、AEC-Q100の基準を満たすためのテストと検証を実施する必要があります。

そのため、設計段階での「設計基準」や、電子部品の各製造プロセスでの「製造基準」などの詳細で細かい要求がなされています。つまり、AEC-Q100は電子部品の製造プロセス全体についての基準であり、単純な製品そのものの規格ではありません。

つまり、最終的な製品が規格に合致していればどのような方法で製造しても構わないというものではなく、製造の各プロセスである程度の基準が設けられているということになります。

4. AEC-Q100に準拠することの重要性

♦ 厳格な規格が必要な理由

車載用電子部品は、自動車の運転安全性、快適性、および効率性を向上させるために設計されています。これらの部品は、温度変化、振動、湿気、電磁干渉などの厳しい環境条件に耐える必要があり、一般的な電子部品と比較して、より堅牢で信頼性の高い設計と製造が求められます。

つまり、一般的な電子部品とは「別物」といえます。

このような、特殊性を考えて、AEC-Q100は、自動車産業における電子部品の安全性と信頼性を保証するために重要です。これにより、自動車メーカーやサプライヤーは、安全で高品質な自動車を製造することができます。

♦ AEC-Q100のメリット

繰り返しになりますが、AEC-Q100の規格に準拠することは、自動車産業において非常に重要です。また、規格に準拠することでいくつかのメリットがあります。

• 高い信頼性と安全性の確保

AEC-Q100の基準に準拠することで、電子部品の高い信頼性と安全性が確保されます。これにより、自動車の運転安全性が向上し、消費者に信頼性の高い製品を提供することができます。

• 品質保証と品質管理の向上

AEC-Q100の規格を満たすためには、厳格な品質管理システムが必要です。これにより、製品の品質保証が向上し、製品の信頼性が高まります。

• 業界標準としての信頼性

AEC-Q100は自動車産業における業界標準として認知されており、この規格に準拠することは、自動車メーカーやサプライヤーにとって市場競争力を維持する上で重要です。

• 顧客満足度の向上

AEC-Q100の基準を満たすことで、顧客満足度が向上します。信頼性の高い製品は、顧客に安心感を与え、ブランド価値の向上につながることがあります。また、製品品質の高さの証明にもなります。

4. AEC-Q100は自動車業界における大変重要な標準規格のひとつです

以上、AEC-Q100について簡単に見てきました、冒頭で説明したように、近年自動車の電子化が進んでいます。このため、車載用電子部品に求められる信頼性も高まっています。このような信頼性の高い電子部品を安定的に供給するためには、厳格な品質管理が特に重要になってきます。AEC-Q100はこのような高度な品質管理の基準となるもので、世界的な標準となっています。

AEC-Q100の実施業務における品質管理の業務は地味な仕事ですが、その重要性は非常に高く、充実感のある仕事です。自動車のソフトウェア化の進展に伴い、電子部品の需要が増加し、同時にその効率化が求められています。この変化に適応するために、専門知識を深化させ、品質管理の分野でのキャリアアップを目指しましょう。未来の技術に貢献するやりがいある道が広がっています。

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筆者:佐藤 文俊 監修:ターンポイントコンサルティングメディアチーム
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